ウェイン・エルウッドというジャーナリストが書いた、こんな寓話があります。

「あなたは旅人だ。旅の途中、川に通りかかると、赤ん坊が溺れているのを発見する。あなたは急いで川に飛び込み、必死の思いで赤ん坊を助け出し、岸に戻る。

安心して後ろを振り返ると、なんと、赤ん坊がもう一人、川で溺れている。急いでその赤ん坊も助け出すと、さらに川の向こうで赤ん坊が溺れている。

そのうちあなたは、目の前で溺れている赤ん坊を助け出すことに忙しくなり、川の上流で、一人の男が赤ん坊を次々と川に投げ込んでいることには、まったく気づかない。」
(『「社会を変える」を仕事にする』駒崎弘樹著より引用)

支援の現場とは、このお話でいう「川下」にあたります。目の前の状況において、一生懸命支援することも、問題に対応、対処することも大事です。

なぜなら、そこで医療がなくて苦しんでる人がいれば、医療行為をすべきです。学校に行けなくて苦しんでる人たちがいるんだったら、学校も建設すべきです。だって、目の前に苦しんでる人がいるから。支援は必要なものです。

しかし、その一方で、支援だけし続けていればいいのか、というとそうではありません。

支援をしなければいけないような課題を生み出す「原因」そのものを変えないと、つまり寓話でいうところの、川の上流の男に気づかない限り、いくら支援をし続けても終わりはありません。

この構造そのものが変わらないと、つまり、原因を生み出す構造、仕組みそのものを変える必要があります。

世界を変えるために必要なこと

本当に世界を変えようとしたときに、重要なポイント、それは「経済構造」だと思っています。経済の仕組みそのものを変えないと、この社会というのは本質的に変わらないのです。

例えば、アフリカにコンゴ民主共和国(旧ベルギー領)があります。人口が7000万。そして、大体20年以上戦闘が続いていて、亡くなった人の数が540万人です。この540万人の9割が紛争関連死と呼ばれています。

紛争関連死とは、戦闘行為で直接亡くなった人じゃないということです。普通なら病院へ行って処置をされれば生きることができたところ、紛争で病院が破壊されたり、病院にいけないことで亡くなってしまう人がいます。

例えば子どもが、単に脱水症状になった場合でも、すぐに経口水を与えさえすれば助かるところを、塩と砂糖と水だけで作った経口補水液すら手に入れることができない。それで亡くなってしまう場合もあります。

それはつまり、戦争のそのものが起こっていなかったら、9割は全く死ななかった、ということではないでしょうか。

コンゴの紛争の原因

では、なぜ、コンゴでこんなに激しい紛争が起きているのか。

その理由の一つは、レアメタルや貴金属、石油といった、資源をめぐるものです。特に多いのはレアメタルです。携帯のスマホのコンデンサーに入っていたり、最近だと電気自動車の電池なんかにも使われています。コンゴというのは非常に精度が高いレアメタルの埋蔵量が多い地域だといわれています。

その資源をめぐって、これだけ大きな紛争が起きて、この紛争にコンゴの周りのアフリカの19の国や、世界中のいろんな先進国の企業や政府がここに介入してくるわけです。これがいまだに続いています。

資源があって、資源を採掘しているのがコンゴの人たちだ、という認識から、よく「では、コンゴの人たちはもうかってるんじゃないの?」「もし資源の採掘を止めてしまったら、コンゴの人たちは貧しくなるんじゃないの」と言われることがあります。

実際に、7、8年前、コンゴに行った際、掘ってる方たちに話を聞きに行ったことがあります。コンゴでレアメタルをどう掘っているのかというと、ショベルカーなどで一度にたくさん掘ってるわけではありません。

大半が、普通の農民たちが、バールみたいなもので手掘りです。1日にどれぐらい稼いでるのか聞くと、「1日に2ドル」と言っていました。どんなに頑張ってもその程度だと言われました。

結局、中間搾取が多く行われ、結果、本当にその資源が埋まっているコンゴの人たちにお金は落ちない仕組みがあります。

そうやって、レアメタルの恩恵を受けているのは、私たち先進国の人間です。携帯電話や電子機器を使って仕事をしたり、コミュニケーションをとっていたり、便利に活用しています。

つまり、私たちの消費活動が原因となりうるとも言えるでしょう。

私たちがすべきこと

しかし、いきなりコンゴの紛争を止めることも、政治を変えることも、当たり前ですができません。

当たり前にできることは何か?この場合の川の上流には何があるのか?

それが経済の構造、つまり、経済的な利権であったり、経済的な動機付けによって、世界にはいろんな問題が起きていると理解しています。
社会問題を根本的から解決するためには、よりよい経済を作るしかない。そう結論に至っています。

「現在という歴史上のこの時点において、国家や市民社会ではなく、営利を目的とする企業こそが人類を持続可能な社会へ導くカギを握っている。」
(『未来をつくる資本主義』より)

「このままでは、世界が成り立たなくなっていくのではないか」

そんな疑問を持っている方も多いのではないかと思います。 これまでの資本主義社会において、企業の第一の目的は、投資家の利益を最大化することだと信じられてきていました。これまでの企業活動がなければ、現在の世界における経済的発展もなかったことも、また事実です。しかし、その行動によって、紛争や環境破壊など、平和を阻害する大きなひずみが生まれてきています。

さらには、そのひずみは、企業活動によって引き起こされている。ひずみの原因は企業活動である。という考えも広まってきています。

そして、これまでの資本主義は終焉を迎えていると、多くの人が口をそろえています。

これからの資本主義経済の中で、企業が生き残るためには、これまでの方法とは異なった方法をとる必要があるのではないでしょうか。

私たちが今考えるべきことは「社会において、本来あるべき姿はどういうものなのか?」ということであり、それは「あるべき企業の姿」ということもできるでしょう。

企業の目指す姿

CSR(企業の社会的責任)という言葉が流行り、取り組む企業が増え始めた頃、その取り組む課題とは、あくまで企業にとって中心的なものではなく、周辺的な、外圧によって決定されるものでした。「社会的課題の解決」に携わることに重きをおいていました。

しかし、2011年にハーバードビジネススクールの教授であるマイケル・E・ポーター氏とマーク・R・クラマー氏の論文『経済的価値と社会的価値を同時実現する共通価値の戦略』にて、CSV (Creating Shared Value:共通価値)つまり、「社会のニーズや問題に取り組むことで社会的価値を創造し、その結果、経済的価値が創造されるというアプローチ」が提唱されました。

(マイケルE.ポーター/マークR.クライマー『競争価値の戦略』DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー論文より抜粋)

この2つの大きな違いとして、CSV(共通価値)には、「ビジネスとして成立する」ことが必須である点です。

社会課題を解決する企業や組織

現実として、経済的な枠組みのものとで、経済人、つまり経済活動の中核たる担い手である実業家、事業家、社会起業家たちが、本業を通じて課題を解決しながら、企業としての経済性の両立を可能にしています。

例えば、日本環境設計株式会社は、衣類、プラスチックなどのゴミからエタノールをつくる仕組みをつくり、そのエタノールを使うことで、国内で使っているプラスチック全てを賄うことができるような取り組みを進めています。

そして、学校で使うチョークの国内チョークシェア30%を超えるトップメーカーの日本理化学工業は、全従業員81人中60人が知的障がい者(内27人が重度の障がい者。平成28年6月時点)が働いています。

さらに「訪問型病児保育」「障害児保育」「小規模保育」などを展開してる認定NPO法人フローレンスの活躍も目覚ましいでしょう。

生き残りをかけて、企業としての存在意義を問う

国王は、為政者に幸福追求を妨げられる民が国家不安定の根だと、世界史に見た。「この国に生まれて本当によかった!」と言える民の幸せ感こそ、国防の基礎だ。ならば、国民の幸福を国造りの最高使命と置くのはあたりまえ。経済成長はそのための重要手段であり、目的ではない。
「この会社に入ってよかった!」と言える社員は、会社のなすこと全てを際立たせる。会社に関わる人々にカネやモノ以上の感動を与え、無敵な競争力をつける。この幸せ感こそ、企業存続の基礎だ。ならば、幸福を企業の最高使命とするのはあたりまえ。成長はそのための重要手段であり、目的ではない。類あっても比のない会社づくりで生き残るという、「戦」いを「略」す、本物のビジネス戦略である。(『私たちの国づくりへ』元世界銀行副総裁・西水美恵子)

「これからは激動の時代」「波乱の多い時代」という言葉は、もう聞き飽きたかもしれません。

どんな時代であったとしても、経営者としては、企業を存続させること、継続することはとても大きなテーマです。

10年後20年後も生き残るために、社会に求められる企業として、事業を営む経営者として、企業の存在価値や存在意義、そして目的はいったい何なのか?ということを、改めて自社に問う事が重要なのではないでしょうか。

そして、そもそも企業価値や、存在目的とは、企業ひとつひとつそれぞれに異なるのであって、一律に語ることができません。

また、CSV(共通価値)として、「事業として成立させること」もとても大きなことです。

そのため、そんな企業としての在り方を学び、研究し、実践する会を立ち上げます。ともに学びを深めて実践を重ねていただけるパートナー企業を募集します。

NPOの世界で長年実践を重ねてきた経験からこそ、「問題解決」を目指して、ともに学び合うことができると感じています。

 

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